こんにちは。採用・キャリア・複業のかかりつけ医、HRドクターです。
今回は会社員として働く人が毎月支払っている厚生年金の、保険給付のひとつ「特別支給の老齢厚生年金」について解説していきます。
厚生年金の保険給付種類
厚生年金の保険給付は、老齢・障害・死亡の3つの事由に分類されます。
- 老齢…特別支給の老齢厚生年金と65歳からの老齢厚生年金
- 障害…障害厚生年金と障害手当金
- 死亡…遺族厚生年金
3分類、5種類の給付があると押さえておきましょう。
まずは、老齢に対して行われる給付の中の、特別支給の老齢厚生年金についてです。
特別支給の老齢厚生年金・昭和60年の見直し背景
昭和60年の改正前は、60歳から定額部分の老齢年金と、報酬比例部分の老齢年金の2段重ねの給付がありました。この頃は年金の財政が豊かな時期でした。
しかし、少子高齢化で支給開始年齢を60歳から65歳に後ろ倒しすることが決定されます。
具体的には、支給開始年齢を5歳後ろ倒しするのに加えて、支給する給付金を「老齢基礎年金」という1階部分と「老齢厚生年金」という2階部分に分けて運用することにしました。
この変更を加えてしまうと、今まで60歳から支給されていた「定額部分」と「報酬比例部分」がいきなりゼロ円になると、国民から批判が出てしまいます。そのため、60歳~65歳の間は「特別支給の老齢厚生年金」を代わりに支給することにしたのです。
この特別支給の老齢厚生年金は、年齢要件と共に段階的に減らされていく仕組みになっています。
特別支給の老齢厚生年金の段階的な廃止
60歳から65歳までの間、定額部分と報酬比例部分に匹敵する特別支給の老齢厚生年金を給付していくと、けっきょく日本の財政は苦しいままです。
そこで、特別支給の老齢厚生年金は平成6年と平成12年、2回の改定を経て徐々に廃止の方向へと向かっていきます。
平成6年改正では、特別支給の老齢厚生年金の1階部分である定額部分を段階的に廃止していくことを決め、平成12年改正では2階部分の報酬比例部分を年齢ごとにカットしていくことになりました。
こうすることで、最終的には60歳~65歳の特別支給の老齢厚生年金は完全に廃止となります。
特別支給の老齢厚生年金の支給要件
生年月日が昔であるほど、多くの特別支給の老齢厚生年金がもらえる仕組みになっています。
特別支給の老齢厚生年金の受給資格期間は、以下の通りです。
保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間=10年以上であること
1年以上の被保険者期間のある65歳未満で、受給資格期間(保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間が10年以上)を満たしている人が、60歳に達したときから特別支給の老齢厚生年金がもらえるということです。
さらに、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、受給資格者の生年月日や被保険者期間の種別ごとに変わります。
支給開始年齢その①
昭和16年4月1日以前生まれ(昭和36年に20歳)の人は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分をフルで受け取ることができます。
昭和16年4月1日以前…定額支給開始年齢60歳(5年分マックス受給)
昭和16年4月2日~昭和18年4月1日…定額支給開始年齢61歳(4年分受給)
昭和18年4月2日~昭和20年4月1日…定額支給開始年齢62歳(3年分受給)
昭和20年4月2日~昭和22年4月1日…定額支給開始年齢63歳(2年分受給)
昭和22年4月2日~昭和24年4月1日…定額支給開始年齢64歳(1年分受給)
そして、この後5年間かけて2階建て部分である、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分も段階的に削られていきます。
昭和24年4月2日~昭和28年4月1日…報酬比例部分の支給60歳から(満額)
昭和28年4月2日~昭和30年4月1日…報酬比例部分は61歳から
昭和30年4月2日~昭和32年4月1日…報酬比例部分は62歳から
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日…報酬比例部分は63歳から
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日 …報酬比例部分は64歳から
昭和36年4月2日~☆特別支給の老齢厚生年金は何も支給されません☆
このように、昭和16年から昭和36年の20年かけて、段階的に減っていくのです。
特別支給の老齢厚生年金の支給繰り上げ
特別支給の老齢厚生年金は、受け取り開始時期を繰り上げることができます。
まず、第1号期間である昭和28年4月2日~昭和36年4月1日までの男性は、報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げ途上にあるので、繰り上げ請求が可能です。
ただし、1年以上の被保険者期間があり、老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていて、国民年金の任意加入被保険者でないものでなくてはなりません。
支給年齢開始年齢に達する前に、老齢厚生年金の支給繰り上げの請求をすることで、請求があった日の属する月の翌月から支給されます。
特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の種類
特別支給の老齢厚生年金は「第1号期間の男性・昭和36年4月1日以前生まれ」に支給されます。この、第1号期間の男性・昭和36年4月1日以前生まれを基準にして、次のようにそれぞれの支給開始年齢が異なっています。
☆第1号期間の女性…昭和41年4月1日以前生まれ(男性の+5年)
☆第2号~4号期間…昭和36年4月1日以前生まれ(男性第1号と一緒)
☆特定警察職員等の期間…昭和42年4月1日以前生まれ(男性の+6年)
特別支給の老齢厚生年金の失権について
特別支給の老齢厚生年金は、受給権者が死亡したときか、65歳に達したときのいずれかで失権となります。
特別支給の老齢厚生年金は、60歳から65歳になるまでの特定の期間に、一定条件の生年月日を満たした人にしか支給されない給付と覚えておきましょう。