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雇用保険の代表的な求職者給付(基本手当等)支給について~後編~

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雇用保険法の一般被保険者が失業した際に受け取ることができる基本手当。

今回は、雇用保険の求職者給付である基本手当の受給要件や、受給までの手続きについて確認していきます。

 

※前編はこちら

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基本手当の受給要件とは

一般の被保険者は、離職日以前の2年間のうちに被保険者期間が通算して12か月あることが受給要件となります。

この離職日以前の2年間は、雇用保険の被保険者であるかどうかを算定する期間のため、算定対象期間と呼ばれます。

 

普通に働いて給与を受け取っている期間が被保険者期間となり、その被保険者期間が12か月を満たしていれば雇用保険の受給資格を手にすることができるという意味です。

そして、受給資格のある一般被保険者は、離職後1年間が雇用保険の受給期間となります。

 

受給要件の例外

雇用保険の算定対象期間である離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上ない人でも、次に該当する人は例外的に雇用保険の被保険者となります。

・特定理由離職者

・特定受給資格者

 この2つに係る事由に該当するときは、算定対象期間(この場合は離職の日以前1年間)に、被保険者期間が通算6か月以上あれば、雇用保険の受給資格が発生するという流れです。

 

雇用保険の被保険者期間とは?

労働者が働いている期間を1か月に区切り、その期間に賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある状態を指します。(賃金支払基礎日数

簡単に言えば、その労働者が1か月の間に11日以上働いて給料を得ていれば被保険者期間とされるのです。

 

なお、労働者が月の途中で入社していて、1か月未満の期間が生じるの賃金支払基礎日数はどのように考えるのでしょうか?

1か月未満の期間が発生する場合は、

  • 被保険者となった日から最初の喪失応当日の前日までの期間の日数が15日以上
  • その期間内に賃金支払基礎日数が11日以上

という2つの要件を満たしたときに、その期間を被保険者期間の2分の1としてカウントします。

 

基本手当を受給する手続きの流れ

まず労働者の離職が決定したら、事業主が雇用保険被保険者資格喪失届離職証明書を添付して、所轄の職業安定所に書類を提出します。

離職証明書には、過去2年間の被保険者期間の状況や離職理由が記載されていますので、この書類をもとに基本手当の受給決定が判断されるのです。

 

その後、3枚複写式になっている離職証明書の1枚を、事業所の所轄である職業安定所から労働者へ渡します。これが、いわゆる離職票です。

 

離職票を受け取った労働者は、離職票を持って自分の住んでいるエリアの職業安定所に行き、求職の申込を行います。この求職の申込を受けた職業安定所で、改めて12か月間の被保険者期間があるかどうかを確認します。(受給資格の決定といいます)

 

無事に受給資格者証を交付された労働者は、そこから新たな就職先を探すために失業認定日までの4週間、求職活動を行います。

そして、第1回目の失業認定日が来たら、先に交付されていた受給資格者証とあわせて失業認定申告書を職業安定所に提出しに出頭をします。

失業認定申告書は、失業認定日までの4週間でどのくらい働いて何日間失業していたのか、どのような求職活動を行ったのかなどを記載するものです。

 

失業認定申告書の内容を確認したうえで、最大28日分の基本手当が被保険者の口座に振り込まれ、同時に職業安定所から被保険者に職業の紹介が行われます。

その後は、この流れを4週間ごとに繰り返すのです。

 

事業主は必ず離職証明書を添付する

労働者が離職したときは、被保険者資格喪失届に離職証明書を添えるのが事業主の義務となっています。

当該事業で、労働者が働いていた期間が12か月未満であったとしても、離職証明書が必要となるため注意しましょう。

というのも、その労働者が当該事業場で働いていた期間が12か月未満であったとしても、ほかの事業場の被保険者期間とあわせれば、被保険者期間が12か月以上となり基本手当を受給できる可能性があるためです。

 

この例外としては、被保険者が離職票の交付は不要であると申し出したとき、事業主は離職証明書を添えないことができます。

ただし例外にも例外があり、離職の日に59歳以上の被保険者がいる場合は、本人の希望は問わず離職証明書を添えなければならないのです。

 

受給資格者が出頭できないケース

受給資格者は、失業認定を受けるために必ず、失業の認定日に居住エリアの職業安定所に出頭しなくてはなりません。

出頭の際は、失業認定申告書に受給資格証をそえて提出をして、さらに職業安定所から職業の紹介を受ける必要があります。

万が一、所定の失業認定日に出頭できない場合は、認定対象期間の全部について認定をできなくなってしまうため注意しましょう。そもそも、失業認定は、被保険者本人がきちんと求職することによって成立するためです。

 

認定の対象となる求職活動の範囲とは?

失業認定の際に求められる求職活動とは、リクナビdodaで求人応募をしたり、知人から求人の紹介を依頼したり、募集要項をただ眺めていたりする行動では認められません。

あくまでも、職業安定所や許可・届出のある職業相談、職業紹介を経由して求人へ応募することが求められます。

 

認定日は変更できる?

4週間に1度出頭しなくてはならない失業認定日は、以下の理由の場合変更することが可能です。

  1. 証明認定の事由に該当する場合
  2. 就職する場合(職業安定所以外からの求人紹介でOK)
  3. 職業安定所以外の紹介で面接に行く場合
  4. 国家試験や検定を受けるとき
  5. 親族の介護などする場合

これらに該当する場合は、受給資格者本人の申し出によって失業認定日を変更できます。

ただし、次回の所定認定日以後は変更できないの(次の失業認定日の前日まで)で注意しましょう。

 

どうしても出頭して変更依頼をできなかった場合は、次のときだけ証明認定ができます。(あとから失業認定日を変更するという意味)

 

  1. 疾病または負傷かつその期間が15日未満
  2. 職業安定所の紹介による面接をしていた
  3. 職業安定所所長の指示した公共職業訓練などを受けていた
  4. 天災ややむをえない理由

ただし基本的には、失業認定日の前日までに出頭して変更依頼をするのが原則となるので、証明認定ができる事由はやや厳しめとなっています。

 

まとめ

今回は、雇用保険の求職者給付である基本手当の受給までの流れを細かく確認しました。

基本手当の知識がないと、「離職票っていつ手元に届くの?」「とりあえずハローワークに行けばすぐ失業手当もらえるよね?」など、離職時にご自身が困ることになります。

会社員として働く皆さん、人事労務の担当者そして経営者などすべての人が、一般常識としてこれらの流れを覚えておくことが重要だと思います。

 

 

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