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会社員向けの健康保険法の仕組み~どんな企業が適用事業所となるのか~

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今回は、会社員向けの健康保険法について、総則や適用事業所の要件をまとめていきます。

 

これから起業される方、まだ5人前後のスタートアップ企業を営む経営者の皆さんには、「自分の会社はいつごろから健康保険法に適用されるのかな?」という視点で見て頂けますと幸いです!

 

 

 

健康保険法の目的

健康保険法は、労働者と被扶養者に対して、業務災害以外の疾病・負傷・死亡または出産に対して保険給付を行い、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することが目的となっています。

 

健康保険法の保険者は全国健康保険協会健康保険組合

健康保険制度の保険者は国ではありません。

大きめの企業は健康保険組合が運営しており、それ以外の企業は全国健康保険協会が運営しています。

 

健康保険組合…単一企業または複数の企業によって設立された組合で、その企業の被用者と家族を対象として健康保険事業を行う公的な法人のこと。健康保険組合が運営する保険のことを組合管掌健康保険と言います。

 

全国健康保険協会…政府によって設立された保険者であり、健康保険組合に加入していない被用者と家族を対象とする「協会管掌健康保険」を運営する公法人のことです。

 

保険の事務は誰が行うのか?

健康保険組合は、保険の給付事務や保険適用・徴収に係る事務はすべて健康保険組合が行う決まりになっています。

一方、全国健康保険協会では保険給付の事務は全国健康保険協会で実施しますが、保険適用と保険料徴収事務については厚生労働大臣が行っている点が異なります。

 

厚生年金と健康保険の被保険者はほぼ同じなのです。そのため、厚生年金制度を運営している厚生労働大臣がまとめて保険適用や、保険料の徴収事務を行っているのが背景にあります。

そして、厚生労働大臣の事務を行う権限は、日本年金機構に委任しています。

 

協会管掌健康保険の事務~日本年金機構に委任されていないもの~

全国健康保険協会の協会管掌健康保険の事務について、厚生労働大臣の権限に係るものはほとんどが日本年金機構に委任されています。

ここでは、日本年金機構に委任されていない事務について確認します。

 

健康保険料の徴収の事務

健康保険料の督促を行うこと(ただし滞納処分の権限は委任されています)

組合管掌健康保険に係る適用事業所についての認可等(ここでは協会管掌健康保険のみになります)

現物給与の価格の決定

 

 健康保険の適用事業所は?雇用保険との違い

健康保険の適用がされる事業所は、強制適用事業所と任意適用事業所に分けられます。

 

強制適用事業所について

国や地方公共団体も含めて法人はすべて健康保険の適用事業所となります。

個人経営の事業所に関しては、常時5人以上の従業員を使用していること法定業種に該当する場合のみ、強制適用事業所になります。

 

法定業種とは、製造や建築、社会福祉事業のことを指しており、農林水産業や旅館、飲食業や接客サービス業、理容業、自由業や宗教などは含まれません。

 

下記画像の表にある、赤字の業種が健康保険の強制適用事業所とはならない非適用業種となります。

 

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参照:厚生労働省「被用者保険の適用事業所の範囲の見直し」

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000565930.pdf

 

なお、2019年5月時点での強制適用事業所は227万事業所あり、任意適用事業所は約9万事業所となっています。

 

任意適用事業所について

強制適用事業所に当てはまらない事業所は、健康保険の任意適用事業所となります。これらの事業所は、厚生労働大臣に申請をして認可を受けることで健康保険の適用を受けることが可能です。

 

★任意適用の要件
  1. 強制適用事業所ではない事業所の事業主が、健康保険の認可を申請すること
  2. 被保険者となるべき労働者の2分の1以上が同意すること
  3. 厚生労働大臣の認可を受けること

この3つの条件を満たせば、任意適用事業所に健康保険制度が適用されます。

 

労働保険との違い

労働保険(労災・雇用)では農林水産業などを除きほとんどの事業所が強制適用事業所となっていました。労働保険よりも強制適用の範囲がやや狭いのが、健康保険法の特徴です。

また労働保険では、労働者が労働保険への任意適用をしてほしいと申請希望を出した場合、事業主がそれに応じる義務が発生します。

一方、健康保険では労働者が「健康保険の適用を受けたい!」と申請希望をしても、事業主に申請を行う義務は生じない点が異なります。

 

健康保険がなくても国民健康保険の受け皿があるため、事業主に適用申請を義務化していないのが背景にあります。

 

任意適用を取り消す場合はどうするの?

強制適用事業所の労働者が減ってしまったり、事業内容が大幅に変わって、健康保険の強制適用要件から外れた場合は適用の取り消しが行われます。

 

任意適用事業所にて事業主の認可申請を行い、被保険者の4分の3以上の同意をとりつけ、厚生労働大臣の認可を受ければ健康保険の適用を取り消せるという流れです。

雇用保険と取り消しの要件は同様となっています)

 

本店や支店など事業所間で転勤があった場合(適用事業所の一括)

健康保険法は事業所ごとに適用されるので、同じ会社(事業主が同一)の中で事業所間を異動した際に、いちいち健康保険に加入し直すのはとても面倒です。

そこで、「適用事業所の一括」と言って、2つ以上の健康保険の適用事業所を同じ1つの事業所と認めるルールが存在します。

 

2つ以上の事業所を、1つの健康保険の適用事業所とみなすためには厚生労働大臣の承認を受けることが必要です。

 

健康保険法第34条

二以上の適用事業所の事業主が同一である場合には、当該事業主は、厚生労働大臣の承認を受けて、当該二以上の事業所を一の適用事業所とすることができる。
2 前項の承認があったときは、当該二以上の適用事業所は、適用事業所でなくなったものとみなす。

 ※引用:日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20121004.html

 

被保険者について

上記でご説明した、健康保険の適用事業にて働く労働者が被保険者となります。

健康保険の適用を除外される人は、主に次の3パターンに分けられます。

 

  1. 短時間労働者
  2. 雇用期間が短い労働者
  3. 75歳以上で後期高齢者医療保険に適用される方

 

具体的な被保険者要件については、次の記事で解説していきます。