今回は労働者災害補償保険法による、さまざまな給付についてまとめていきます。
※労災保険の総則や強制適用・任意適用事業者についてはこちらの記事を参照ください。
さまざまな労災保険の給付
労働者災害補償保険法の給付種類は幅広く、下記の通りです。
- 療養補償給付/療養給付
- 休業補償給付/休業給付
- 障害補償給付(障害補償年金/障害年金/障害補償一時金/障害一時金)
- 遺族補償給付(遺族補償年金/遺族年金/遺族補償一時金/遺族一時金)
- 葬祭料/葬祭給付
- 傷病補償年金/傷病年金
- 介護保障給付/介護給付
- 二次健康診断等給付
これらの給付を、まずは保険事故別に分けて整理してみます。
労災保険の保険事故は下記4つです。
①業務災害
労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡に関する業務災害の保険給付です。
療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護保障給付
②複数事業労働者
2つ以上の事業の業務を要因とする複数業務要因災害への保険給付です。
複数事業労働者療養給付、複数事業労働者休業給付、複数事業労働者障害給付、複数事業労働者遺族給付、複数事業労働者葬祭給付、複数事業労働者遺族給付、複数事業労働者傷病年金、複数事業労働者介護給付
すべて名称の頭に「複数事業労働者」と付くのと、業務災害のように「補償」と入らないのが特徴です。
③通勤災害
労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡に関する保険給付です。
療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金、介護給付
こちらも業務災害のように「補償」という言葉が入らないのがポイントです。
④二次健康診断等給付
過労死を未然に防ぐ観点で支給される保険給付です。
二次健康診断等給付
次はこれらの保険給付を、治ゆ前・治ゆ後、死亡の3段階に分けて整理してみます。
★治ゆ前の保険給付
治ゆ前の保険給付は、治療費を補填する療養補償給付(複数事業労働者療養給付/療養給付)が給付されます。
また、働けなくなった労働者の生活費を補償する所得補償系の給付である、休業補償給付(複数事業労働者休業給付/休業給付)と、休業が長期化したときに切り替わって支払われる傷病補償年金(複数事業労働者傷病年金/傷病年金)があります。
★治ゆ後の保険給付
治ゆ後に障害が残った場合は、障害補償給付(複数事業労働者障害給付/障害給付)が支給されます。
また、治ゆ前と治ゆ後にまたがって、労働者に介護が発生した場合は介護費用を補填する形で介護補償給付(複数事業労働者介護給付/介護給付)が支給されます。
★死亡による保険給付
労働者がなくなった際は、遺族向けに遺族補償給付(複数事業労働者遺族給付/遺族給付)が支払われ、葬祭費用の補填として葬祭料(複数事業労働者葬祭給付/葬祭給付)が給付されるのです。
これらの給付は、原則として労働者や労働者の遺族が請求して行われますが、傷病補償等年金は請求不要となっているので押さえておきましょう。
療養補償等給付について
療養補償等給付には、現物支給の療養の給付と現金での給付の2パターンが存在します。
原則として指定病院等で治療を受け、その費用負担を補償される(現物支給)の方法をとりますが、指定病院以外で療養を受けた場合は、その費用を労働者が1度支払ってから後日、現金支給となる流れです。(療養の費用の支給)
療養の給付の範囲
政府が必要と認めた医療行為は療養の給付の対象となりますが、具体的に定められていません。
診察や、薬の支給、災害の起きた現場から医療機関への移送費、通院費、療養の一環として行われるリハビリテーション医療などさまざまなものが支給対象です。
ただし、温泉療養は原則対象外となります。
療養の給付は、都道府県労働局長の指定する指定病院等や、社会復帰促進等事業として設置されている労災病院で給付を受けることとなっています。
労働者に一部負担があるかどうか?
業務災害に対する療養補償給付、複数業務要因災害に対する複数事業労働者療養給付にて、労働者に費用負担はありませんが、通勤災害は本人の落ち度があるということで200円の一部負担金が発生します。
この200円は、労働者に支払う休業給付額から控除されることになっているので、休業給付を受けないものには徴収されません。
また、通勤災害の200円の一部負担金徴収は1回のみです。
療養の費用の給付について
原則として指定病院等で療養を受け、療養補償等給付を受給しますが、労働者が選り好んで指定病院等以外で受診した場合は、療養の費用の給付は受けられないので注意しましょう。
療養補償等給付の請求手続きについて
療養の給付(現物支給)を受ける場合は、療養を受けた指定病院等を経由して、所轄の労働基準監督署長に請求手続きを提出すればOKです。
一方、療養の費用の給付を受ける場合は、労働者が直接、所轄労働基準監督署長に請求書を提出して現金を受け取ります。
なお、療養の費用の請求に関しては次の事項をしっかり記載のうえ提出が必要です。
労働者の使命と生年月日・住所
事業所名と所在地
負傷や発病の年月日
災害の原因や発生時の状況
傷病名または療養の内容
療養に要した費用の額
指定病院等でなぜ療養の給付(現物支給)を受けなかったのか
複数事業労働者かどうか
次の記事では、療養補償等に続いて、休業補償等給付・傷病年金など詳しくまとめていきます!
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