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労働安全衛生法~労働者の健康管理・ストレスチェックについて~

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こんにちは。HRドクターのさつきです。

前回は労働安全衛生法の総則について解説しました。

 

今回は、労働安全衛生法の中で定められている、労働者の健康管理についてまとめます。

 

企業が行うべき労働者の健康管理とは

労働者の健康管理とは、次の3つに大別されます。

 

  1. 健康診断…病気がないかを調べる
  2. 長期労働に係る面接指導…過重労働でからだが疲れていないか確認する
  3. ストレスチェック…こころの健康が保たれているか確認する

 

健康診断には、身長・体重などを計る一般健康診断と、特殊な仕事に従事している労働者向けの特殊健康診断、歯科医師による健康診断と、都道府県労働局長から指示されて実施する臨時の健康診断などがあります。

 

それぞれの特徴やルールを見ていきましょう。

 

一般健康診断

一般健康診断は、労働者の雇い入れ時に実施するものです。ただし、労働者が直近3か月以内にほかの事業所経由や個人で、医師による健康診断を受けている場合は、その結果を証明する書面提出でOKとされます。

 

雇い入れのあとは、一般健康診断は1年以内ごとに1回、定期的に行います。

ポイントとしては、この一般定期の健康診断は、フルタイムの正社員以外にも適用されることです。

 

具体的には、有期労働契約で1年以上働く予定の者や、アルバイト・パート労働者のうち、週の所定労働時間の4分の3以上働いている者も、一般健康診断を受けなくてはなりません。

 

特定業務に従事する労働者向けの健康診断

一定の有害業務(坑内労働や深夜業)に就いている労働者は、からだへの負担がかかるため、一般健康診断よりも短い6か月間のサイクルで医師による健康診断が必要になります。

 

その他の健康診断

その他には、海外派遣労働者向けの健康診断と、食堂などで給食の業務に従事する労働者向け、そして歯の健康診断のルールが設けられています。

 

海外派遣労働者は、6か月以上海外派遣される場合は医師による健康診断を受けなくてはならず、海外で6か月以上派遣されたのちは帰国後にも同じく医師による健康診断を受けなくてはなりません。

 

給食をつくる仕事に従事する労働者は、雇入れのときまたは、配置替えの際に、検便を行うよう定められています。

 

歯科医師による健康診断は、有害な業務と政令で定めるもので働く労働者向けに、6か月以内ごとに1回、歯科医師によって行われるものです。

 

特殊健康診断

これは有害な業務だ、と政令で定めるものに従事する労働者は、雇入れの際または配置替えの際などに、6か月以内ごとに1か、医師による特別の項目について健康診断を受ける必要があります。

ここでの有害業務とは、たとえば原子力発電施設での労働や、アスベストを扱う仕事などがあげられます。

有害業務に従事したあとも、からだに異変が起きる可能性があるので、過去に有害業務に従事していた人も6か月以内ごとに1回は医師による特別な項目の健康診断を受けます。

 

臨時の健康診断

都道府県労働局長が、健康診断が必要だ!と認めたときは、労働衛生指導医の意見に基づいて、臨時の健康診断の実施などを指示することができます。

 

この労働衛生指導医とは、労働衛生に関して学識経験のある医師の中から、厚生労働大臣が任命して、各都道府県労働局に置かれた特別な医師のことです。

 

労働者には受診の義務や使用者の報告義務について

ここまで、さまざまな健康診断についてご紹介してきました。

皆さんが毎年受ける一般健康診断は、1年に1回ですが、その他の特殊な健康診断などは6か月以内に1回受ける点が異なります。

 

労働者は、基本的には事業者の指定した医師や歯科医師が行う健康診断を受けます。しかし、かかりつけ医などによって、自ら選択した医師のもとで健康診断を受けて結果証明を事業者に提出することも可能です。

 

(条文では「事業者が行う健康診断の受診義務は負わない」と表記がありますが、これは健康診断を受けなくてOKなのではなく、他の医師または歯科医師の行う健康診断に相当するものを受けて、結果証明を提出した場合となっています)

 

事業者は、健康診断個人票を作成して5年間保存が必要です。

そのほかにも、常時50人以上の労働者を抱えている事業者は、定期健康診断結果報告書を、所轄の労働基準監督署に提出する義務があります。

 

これらの健康診断を運用していて、もし労働者に異常な所見があると診断された場合は、医師や歯科医師の意見を聞くようにします。医師などから労働者の業務に関する情報を求められたときは、情報をうやむやにせず、速やかに情報提供を行うことが義務づけられています。

 

長時間労働者に係る面接指導について

ここまで健康診断の種類や、健康診断における事業者および労働者の義務などを確認してきました。続けて、長時間労働に関する措置や、ストレスチェックについてお話していきます。

 

長時間労働を行った労働者に対して、面接指導を行うルールがあるのですが、長時間労働の対象者となる労働者は、①一般の労働者、②高度プロフェッショナル制度で働く労働者、③の3パターンがあります。

 

1一般の労働者向け

1週間あたり40時間を超えて労働し、かつ1か月あたり80時間を超え、疲労が蓄積されている場合、本人の申し出があれば医師による面接指導を行わなければなりません。

つまり、事業者は1か月あたり80時間超えた労働者がいる場合、どのくらい長時間労働をさせたのかという情報を、労働者に必ず通知しなくてはいけないという義務があるのです。

 

医師の面接指導を受けないことに対する罰則はありませんが、産業医が面接指導を受けた方がいいですよ、と勧奨することもできます。

 

2研究開発業務従事者向け

先ほどの一般労働者向けの面接指導の要件とは、下記点が異なります。

 

  • 対象労働者…時間外・休日労働が月100時間を超えたもの
  • 実施要件…労働者の申し出がなくても強制実施し、行わない場合は罰則あり

医師の面接指導を実施したあとは、就業場所や職務内容を変更したり、有給休暇を付与するなど措置が必要です。

 

3高度プロフェッショナル制度適用者向け

高度プロフェッショナル制度で働く労働者も、研究開発業務での労働者と同じく、下記ルールが設けられています。

 

  • 対象労働者…時間外・休日労働が月100時間を超えたもの
  • 実施要件…労働者の申し出がなくても強制実施し、行わない場合は罰則あり

医師の面接指導を実施したあとは、職務内容の変更や有給休暇の付与、その他健康管理時間が短縮されるための配慮などの措置が必要になります。

 

心理的な負担・ストレスチェックについて

労働者のメンタルヘルス不調への気付きをうながして未然に防止するための制度がストレスチェック制度です。

常時50人以上の労働者を使用する事業場では1年に1回、必ず実施しなくてはならず、ストレスチェックの結果「高ストレス」と判断された場合は、労働者の申し出により医師による面接指導を実施することになります。

 

検査項目は以下3つに分けられます。

  1. 職場における心理的負担の原因
  2. 心身の自覚症状
  3. 労働者への支援

ただし、労働者にストレスチェックを受ける義務はありません。ストレスチェックを受けることが労働者のストレスになっては意味がないからです。

 

これらをもって、事業者は1年以内ごとに1回、定期的にストレスチェックを行い、その検査結果等報告書を所轄の労働基準監督署長に提出する義務があることを覚えておきましょう。