HRドクターの待合室 since2019

中小・小規模企業向けの採用支援業をしているHRドクターのメディアです。2019年からHRドクターとして事業展開をしています。

労働者災害補償保険法の全体像と労災保険の適用事業~人事労務の基礎知識~

f:id:HRdoctor:20201119213809p:plain

 

こんにちは。HRドクターのさつきです。

今回は、働く皆さんを守る社会保険制度の中の、労災保険についてお話します。

今まで労災について深く考えたことが無かった人も、労務担当になり社会保険のことを調べている人にも分かるよう、労災保険の全体像を解説していきます。

 

 

 

まず、労働者災害補償保険法の全体像を単語でまとめると、ざっくり下記のようになります。

 

総則

適用事業…強制適用事業と任意適用事業

適用労働者と特別加入者…除外は公務員、特別加入は中小事業主等/一人親方等/特定作業従事者/海外派遣者

保険事故…業務災害(負傷/死亡/疾病)と通勤災害(負傷/死亡/疾病)

保険給付の種類…業務災害の給付、通勤災害の給付、二児健康診断等給付

保険給付のいろいろ…給付制限、給付基礎日額、保険給付の通則(未支給給付/支給期間と支払い期月)

社会復帰促進等事業

特別給付金…定率・定額・特別給付

費用負担について…国庫補助と事業主からの費用徴収

保険料労働保険料徴収法

雑則…不服申し立てや事項

 

ざっくり書いても、非常に多くのルールが定められている保険制度と言うことが分かりますね。

めげずに1つずつ、少しずつかみ砕いて書いていきたいと思います!

 

労働者災害補償保険法とは

仕事が原因で労働者がケガや病気になることを業務災害と言います。

業務災害となった場合、使用者は労働者の補償をしなくてはなりません。(災害補償責任)

労働者災害補償保険法は、この労働基準法の災害補償責任を代行する役割を持ちます。

 

労働基準法に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法または厚生労働省令で指定する法令に基づいて労働基準法の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は補償の責を免れる。

 

業務災害のほかにも、業務に密接な通勤途中の通勤災害に対する補償や、近年増加したダブルワーカーの方向けの複数業務要因災害に対する給付、そして二次健康診断等給付なども労災保険のカバー領域となります。

 

これらの給付だけでなく、労働者の社会復帰の促進や、労働者および遺族の方を擁護するため、また安全・衛生の確保等を目的とした、社会復帰促進等事業も労災保険の中で定められています。

 

労働者災害補償保険法の目的と事業を条文でチェック■

以下、条文から引用します。

第一章 総則

第一条 労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 

第二条の二 労働者災害補償保険は、第一条の目的を達成するため、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。

引用 ・労働者災害補償保険法(◆昭和22年04月07日法律第50号)

 

保険事業の運営主体である保険者は政府

労働者災害補償保険は政府が保険者となります。

厚生労働省労働基準局長と、所轄都道府県労働局長、そして所轄労働基準監督署長のしれぞれに、次の役割があります。

 

厚生労働省 労働基準局長

※ただし事業主からの民事損害賠償との調整は厚生労働大臣

 

②所轄の都道府県 労働局長
  • 労災保険の適用と保険料の徴収と収納の事務
  • 指定病院や健診給付病院等の指定の事務
  • 二次健康診断等給付の事務
  • 特別加入者の給付基礎日額の決定に係る事務

 

③所轄の労働基準監督署
  • 二次健康診断等給付以外の保険給付の事務
  • 特別支援金の事務

初見の方には、労働基準局長と労働局長、労働基準監督署長の誰がどこの人なのか、よく見分けがつかないですよね…。

 

①から順番に、国の中央→各都道府県→各地域とブレイクダウンして、役割分担をしているとイメージしておきましょう。

 

※「所轄」とは、事業所の所在地を管轄するという意味があります!

 

労災保険の適用事業について

原則として、一人でも労働者を使用している場合は、すべての事業が労働者災害補償保険法の強制適用事業となります。

(ここでの労働者とは、日雇い労働者も含まれます)

 

一方、個人経営と農林水産業、労働者が常時5人未満の小規模事業者は、暫定任意適用事業となります。

これらの暫定任意適用事業は、労災保険に加入したいときには、厚生労働大臣に申請&認可を受けてから適用事業になる流れです。

 

■個人経営についての条文表現をチェック■

都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業、法人である事業主の事業、船舶法第1条に規定する船員を使用して行う船舶所有者の事業及び業務災害の発生のおそれが多いものとして厚生労働大臣が定める事業を除く

→「暫定任意適用事業になるものは上記法人を除く」と表記されているので、ここでは個人経営が暫定任意適用事業となるという意味になります。

 

適用除外の事業について

国の直営事業、官公署の事業(いわゆる公務員)には労災保険は適用されません。

この中に、公的な仕事だけど民間の人が働いている独立行政法人という事業者があります。独立行政法人の中でも行政執行法人以外の法人職員には、民間労働者と同様に労災保険が適用となるので注意しましょう。

 

★適用除外国家公務員、地方公務員、独立行政法人の中の行政執行法人の職員(国家公務員扱いのため)

 さらに細かいのですが、上記の適用除外の中でも独立行政法人の中の行政執行法人は労災保険の適用は受けませんが、労働基準法の適用は受けます。

 

労働基準法の適用範囲は労災保険の適用範囲よりも広くなっていると押さえておくと良いでしょう。

 

強制適用・適用除外の例外

その他の例外としては、地方公務員のうち「現業部門の非常勤職員」には公務員でありながらも労災保険法が適用されます。

例)市が経営している水道の事業に従事している非常勤の職員など

 

まとめ

今回は労働者災害補償保険法の全体像と、適用事業・適用除外の事業について簡単にまとめました。

ちなみに、この労災が適用される労働者は、労働基準法9条で定められた全労働者となります。

 

日雇いの方、アルバイト・パートなど雇用形態を問わず、労働時間も関係なく労災が適用となります。もちろん在宅勤務者や、昨今増えてきた2以上の労災保険適用事業で働くダブルワーカー、そして日本に住所を置いている外国人労働者にも労災保険が適用されます。

 

ちなみに私はフリーランサー個人事業主)で、企業と業務委託契約を結んで働く者なので、労働者ではありませんし労災保険が適用されません^^

 

次回からは、業務災害や通勤災害、給付のしかたなどを詳しく書いていきます!

 

★HRドクターという屋号名で2019年よりフリーで働いております!社労士勉強中の方や、人事・経営者の方、これから起業するために労務制度まわりを押さえておきたい方など、仲良くしてください!

 

hrdoctor.work