前回は、変形労働時間制やフレックスタイム制について解説をしました。
労働時間のみなし制とは、実際の労働時間がどうだったかにかかわらず、〇〇時間働いたとみなす制度のことです。みなし制には、事業場外労働のみなし労働時間制と、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の3つ種類があります。
それぞれのみなし制の導入のしかたやポイントをまとめていきます。
1.事業場外労働のみなし労働時間制
外回りの営業職などに適用されるみなし制です。
ただし、使用者がスマホなどの通信機器を通して、労働者に指示を出し労働時間の管理ができる場合はみなし制の適用はされません。
みなし制が適用された場合は、原則として所定労働時間働いたとみなされます。ただし、所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合は、業務の遂行に必要な時間を算定して、それが法定労働時間を超える場合は届出が必要になっています。
ようするに、フレックスタイム制のときと同様で「労働者に任せてるから労働時間は管理しなくてOK、働かせ放題」というのはあり得ないということです。
2.専門業務型 裁量労働制
研究職やエンジニアなどに適用され、労使協定で導入するものです。
これらの職種は、その業務の内容を使用者が細かく指示をするのが難しいので、労働者の裁量にゆだねて働かせましょうね、というものです。
この対象業務は国で定められています。
労使協定で締結する内容
専門業務型裁量労働制を導入する場合は、次の5つを労使協定で定めます。
- 対象業務
- 対象業務に従事する労働者の労働時間
- 労働者に業務の進め方や時間配分について指示だしをしないこと
- 使用者が労働者の健康および福祉を確保するための措置をすること
- 労働者からの、苦情の処理に関する措置を講ずること
専門業務型裁量労働制は、仕事の進め方を労働者に任せるものですが、使用者は労働者の健康管理はしなくてはいけません。
3.企画業務型 裁量労働制
事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務に就く労働者むけの裁量労働制です。この企画、立案~というのは、企業の経営戦略を担う業務のような仕事を指しています。
対象範囲が広い分、導入要件は厳しくなっています。
導入のしかたと導入後について
労使委員会をもうけて、5分の4以上の多数議決を行い届出を行います。
導入後は、労働者の労働時間の状況と、労働者の健康および福祉を確保するための措置(健康診断など)の実施状況を6か月に1回、必ず所轄労働基準監督署長に報告する義務があります。
まとめ
一般的には法定労働時間の1日8時間・週40時間の範囲内で労働時間を管理していきますが、さまざまな業種・企業規模にあわせて、変形労働時間制やフレックスタイム制、みなし制度が設けられています。
初めて人事になる方や起業したばかりの方には、少々ややこしく感じるかもしれませんが、労働時間管理を誤ると企業の信頼に大きく影響してしまいます。
・どの事業所が対象となるのか
・制度を導入する要件は何か
・導入後、使用者には何か義務や罰則があるのか
この辺りを確認しながら、1つずつ覚えていきましょう。
※次回は、高度プロフェッショナル制度について解説する予定です。記事公開ごとにTwitterで投稿していきます!